第182章

大島莉理は下唇をそっと噛み、右腕のあたりの服地を指先で軽くつまんだ。

「そのときは、そこまで考えてなかったんです。泳げるかどうかなんて関係なくて……遠藤凛が落ちるのを、黙って見てるわけにはいかなかったから」

「つまり、自分の身は後回し」

田中辰哉は目を細める。

「……ふん。立派だな」

大島莉理「……」

この人、絶対に怒ってる。

田中辰哉は踵を返して歩き出す。大島莉理も慌てて追いかけた――が、一歩踏み出した瞬間、腕が引きつって、鋭い痛みが走った。

こめかみがぴくりと跳ねるほどの激痛。

「っ……!」

腕にそっと触れただけで精一杯だったのに、田中辰哉はもう引き返してきていた。大...

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